2006-4-23
ラブレターをもらったんです。
ドアを開け、靴を捨てるように脱いで、灰とラブレターを投げ散らかした。
肺から零れる叫び声。
「うぉぉぉぉおおいぃおいおおぉおいいいっっ」
息が続かない。
「ぉおい〜……おいぃい〜………ぃ〜…」
折れた体を振り上げると同時に、呼吸して。
「すぅぅぅぅぅぅううううう」
遠吠えをあげた。
「ぅっなんじゃこりゃぉ!!」
クルクルと廻って。
「なんじゃこりゃ!!なんだそりゃ!!なんじゃっちゅうんじゃ!!なんじゃ!!なんじゃなんじゃなんじゃなんじゃなんじゃ」
空気を掻き乱す。灰と紙が踊る。
「なんじゃんじゃんじゃんじゃんじゃんじゃ、じゃんじゃんがじゃじゃじゃん」
エアギター。
「じゃんだんずっだじゃずだんずんずん。でぃぎだでぃずだ!だらでぃだー!」
口ドラム。肺と髪が震える。
「ば!!っばばーん!!」
倒れた。
夜の宙、天井より低く、ひらひらと紙が降ってくる。
息が荒い。長い髪はぐしゃぐしゃだ。
「………庭には……」
いたずら書きと、枯れかけた松と、夕日焼けたトーテムポール。
「…二羽……」
口に裏切られた。鶏なんていないのに。二羽だっていない。鷺と鴉は、もういないんだ。
「…ちっくしょう。死んじゃえよ………死んじゃったよ……死んじゃった」
口め。余計なことを。
そむけるように、あー喪服しわになるなぁ。着替えなきゃ。と、あたしは思う。
けれど立ち上がれない。
一枚、最後まで踊っていたラブレターが、揺れて、あたしの顔の上に降ってきて、わぷ。
顔からどける。
2種類の走り書き。闇の中でも分かる、見慣れた字。
「鷺へ。ラブレターだと思ってくれ」
「じいさんが死んだ時、枕元にあったものです。鷺ちゃんが読んで、どう処分するか決めてください。 鴉太郎」
この変な小説は、だからつまり、ラブレターで遺書だ。おじいちゃんからの。
裏返す。
懐かしい書き方で、途中までは慎重で丁寧だけど後半はまっすぐに引かれた線がなくて読みづらい、おじいちゃんこれ曲線しかないけど、カタカナだよね?
タイトルを、声に出してみる。
「エセー・ストーリーテリカ」