赤塚不二男『タモリ、それでいいのか?』感想 前編

二十世紀は異端に商品価値が成立した、いわばアウトサイダーの世紀だった。しかし、同時に、二十世紀はタモリの世紀でもあったのだ。

赤塚不二男『タモリ、それでいいのか?』

かっこいい。かっこよすぎる。荒唐無稽でハチャメチャであるのだが、そのハチャメチャが持つ力が、地球を、あるいは二十世紀という時間を丸ごとぶつけられるような衝撃である。

本書は、タモリの系譜を追っていくことで近代史の新たな一面を描く歴史小説のふりをしているが、もちろんデタラメである。だってなんだよタモリの系譜って。タモリは一個人・森田一義の芸名だからね。
しかし、不思議と説得力がある。あらゆる異端者を<タモリ>と冠し、ピカソ/ジョン・レノン/ティム・バートンといった時代を築いた芸術家をやたらとフランクに書く。ピカソが『ゲルニカ』を完成させた夜に、「やっべー。まじかっけー。俺天才じゃね?」と呟くくだりなどフリーダム過ぎる。ジョン・レノンがバスルームで『All You Need is Love』を鼻歌で作曲したとか、もうちょっと、ねえ。自重してくださいよ。


同時に、アウトサイダープロパガンダに利用されていくことで、世界大戦や共産主義崩壊に結びつけられていく。こうやってまとめてしまうと、どう見ても駅前で虚空に演説してる人の妄想としか思えないのだが、そんな無茶なデタラメがまたおもしろい。


さらに一方で、歴史に名を残さなかった異端者たちのエピソードも描く。世界を変えたアウトサイダーがやがて一般的になりつつ、アウトサイダーのままで潜伏する、それに出会って人生を変えられたとは口が裂けても言えないような個性豊かなアウトサイダーの系脈が、地球を飛び回りながら、やがて日本、福岡県に到達しタモリが生まれる。タモリの世紀、元年。このめまぐるしいハッタリには実に痺れた。


そして、タモリが生まれたその日を境に、二十世紀は混沌へ向かって突き進み始める。

後編は、同人誌『Tamorization』(http://bwn.g.hatena.ne.jp/keyword/Tamorization)に掲載されています!

というのは嘘です。


けどなんかいろいろ載ってるタモリ同人誌『Tamorization』は、明日販売されます!買いに来るといいよ!いいよ!