ミキサー室にて


「え?何この三文芝居? ズンタタ?懐かしのズンタタ? それかあれねー。第三舞台

「はいボス!ちょっとアレンジ加えてみました」

「アレンジかー。アレンジしちゃったかー。そっち方向に。」

「はいボス!」

「君あれね。すっごい返事はいいのねー。……もうちょいオープンにいこう。うん。アレだよね。MOCHIO よく知らないんだよね」

「はいボス!」

「いい返事だー。なーのーにー MOCHIO Interview しちゃったんだ。MOCHIO抜きで。なんだっけ?あの…」

「スマイリー蜘蛛男です」

「うん。蜘蛛男くんの、一人芝居で」

「はいボス!」

「さも MOCHIOがいるかのように」

「はいボス!」

「でも歌は、蜘蛛男くんの替え歌で」

「はいボス!」

「わかった。返事いいのわかったから。もうちょい脳通してしゃべろう。な」

「イエスボス!」

「うーん。そういうんじゃないな…まいいけど。アレだよね。内容めちゃくちゃだよね」

「イエスボス!」

「うん。なんでもイエスっていやいいってもんじゃなーい。そゆもんじゃなーい。ね?」

「ノーボス!」

「うわ殴りてぇ。まいいけど。そもそもさー蜘蛛男じゃないよね。腕もげたりしてないよね」

「演出ですボス!」

「初めて会話してる感じになってきたねー。えらいよー。えーとその演出は、どう?おもしろい?」

「おもしろくかは、ちょっとよくわかんないです」

「わかんないんだ。ふーん。え意味あるの?」

「意味は全然ないですボス!」

「いい返事だ。じゃあじゃあ、おもしろいかわかんない上に意味はないんだ」

「はいボス!」

「大丈夫?自分で自分見失ってない?」

「自分?ちょっとよくわかんないです」

「わかんないんだ。自分はー、自分なのにー、自分のことがー、わかんないんだー?」

「はいボス!」

「うん。バカだよね」

「とんでもない!バカじゃありません!」

「あ、ゴメンねーだよねーバカじゃないよねー。でもじゃあこれ録音してどうすんの?放送するの?お昼とかに?みんなが楽しくお昼を過ごしてる時に、おもしろいかわかんない、意味は全然ないものを、放送しちゃうの?」

「いいえボス!ぼくたち録音部なんで、放送とかはちょっと…」

「あ、ごめんてっきり放送部かと思ってた。録音部かー。でも録音したものを、放送部が流したり」

「放送部は放送部で録音したのを放送します。録音部は録音したのを録音して」

「どうすんの?」

「ずっと録音します」

「ずっと?」

「はいボス!録音しっぱなしです」

「そっかー。それは意味ないねー」

「意味ありませんボス!」

「いばっちゃったかー。……あの、さっきからボスボス言ってるけど、あたしただの掃除のおばちゃんだから。あんたたちのボス…っていうか顧問の先生は、床に転がってあたしのモップとじゃれつくのに夢中のこのおっさんだから」

「え!?じゃあ、ボスのことはなんと呼べばいいんですか?」

「うんボスじゃない。ボスじゃないから。耳だいじょうぶ?」

「ボスのお名前は?」

「脳か。いけないのは脳か。まいいや。あたしはねぇ、槍溝愛っていうんだけど」


     唐突にカーテンフォール。トランペットが鳴り響いて。