怪談「顔」

心の中で声をだしてお読みいただきたい。


「……で、助かったーと思ったときに、女の声で『死ねばよかったのに』」
「きゃ〜!!」
「怖え〜」
「まだ心臓バクバクいってる」
「こ、怖いよ。怖すぎるよ」
「すげぇ怖かったなぁ。顔が」
「ああ。顔」
「顔怖すぎて心臓止まるかと思ったよ」
「どうやったらそんな怖い顔になるんだよ」
「さわっていい?」
 ぺた
「……やわらかい」
「マジで?」
 ぺた
「や、やわらかい」
「このやわらかさが、あんだけ怖い顔を作りだすんだなぁ」
「ちょっとやめなよ〜」
 ぺたぺた
「あ…」
「どうした?」
「へこんだ」
 ぺた
「どんどんへこむぞ!」
「まじで〜?」
 ぺたぺたぺた
「こんなへこむの!?」
「すげぇ」
「心臓が爆発しそうだ」
 ぺたぺたぺたぺたぺたぺた
「おい!これ…戻るのか?」
「あ」
「……じゃ、じゃあさ、こっちへこませて…、こう…んでこっちをこうして…」
 ぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺた
「なあ、ところでさ。こいつ誰だ?」