「たむらけんじ、一瞬のヒストリー」たむらけんじの未来を考えるシンポジウムでの講演より


キャー。(一同斉唱)
ありがとうございます。


えー、たむらけんじ。あ、敬称は省かせていただきますが、たむらけんじと言えば、「死ね!」である。これはお集まりの皆さんもご存知の通りと思います。
「俺より売れてる芸人全員…(ここで猛る観客の1人から「死ね!!!」の声)」はは。まあ抑えて。お気持ちはわかりますが、私に死ね、と言われても、ねえ?死にますか?(会場に笑い)


そう。「俺より売れてる芸人全員死ね!!!」このギャグに見られる、強烈な嫉妬。売れることへの渇望。世の理不尽への抵抗。
また、「玄関開けたら2分で死ね!!!」という、発想の輝き。切れ味と申しますか。
たむらけんじの魅力は、くめども語りつくすことはできません。(自然と万雷のごとき拍手)はは、ありがとうございます。ありがとうございます。ええ。もうよろしいですよ。座ってください。落ち着いて、落ち、ちょっと、もう、うるさい!!死ね!!!(会場爆笑。そして着席)


いやいや、えー、どこまで話しましたっけ?(会場・東京ドームに入りきらなかったため、その外を囲んでいた聴衆の一部で、「たむら先生の話を忘れるとは!!」と暴動。ガードマン出動)
いやすいません。えー、たむらけんじはスゴイ!素晴らしい!(一同深くうなずき、数名頚骨骨折)
しかし、これほど多くの皆さんをひきつけてやまぬ、たむらけんじ。彼は既に売れてしまっているのではないでしょうか?永遠のアウトロー。お笑いの破壊者。たむらけんじより売れている芸人は、みんな死ぬか、売れなくなってしまいました。
すべてのテレビ局は、24時間たむらけんじの番組を、再放送を流しています。
新聞を開いてみてください。一つの記事、1600文字に、80回はたむらけんじと書かれています。
インターネットでたむらけんじと検索すれば、パソコンが壊れます。
イメージキャラクターは、すべてたむらけんじたむらけんじが幼少の頃食べた!!と、なんと、うまい棒にも書いてあります。


資源。情報。金。人。みんなたむらけんじの為にあります。たむらけんじが全てで、全てがたむらけんじ。逆にたむらけんじ抜きでも、以前と何も変わらないかもしれません。(聴衆にざわめき)


でもこれっておかしいんじゃないですか?
(早口になって)今はまだ、世界はたむらけんじを消費しています。しかし、これ全部消費しきれなくなって、「お前らみんな死ね!!!」と言われて死ぬ自殺者は毎日増えて日に1000人を越しました。それっておかしくないですか?たむらけんじは絶対なんですか?「お前らみんな死ね!!」って…。(銃声。聴衆の1人自殺。流れ弾で2人死亡・2人負傷)


ああ。おかしい。お前らみんな狂ってる!!なんやっちゅうねん!!たむらけんじがなんぼのもんやねん!!おかしいぞ。絶対こんなんおかしいぞ。「死ね!!!」って、なんかもっとちゃうもんやん。たむらぁ!!!そうやろ!!ちゃうもんにしなあか(ここでステージで爆発。聴衆の「キャー」という呟きが響いて…)


この事件で、講演をしていた岡村隆史さん(たむらけんじさんの付き人)他、数十名が死亡
しました。


コメント(たむらけんじさんは多忙のためコメントがとれませんでした)
(涙を流して)岡村さん、なにしてはりますのん。たむら先生気にしんといてください。この人アホなんですわ。(握ったこぶしから血をにじませながら)
矢部浩之(元岡村さんの相方・自営業)



これたむらけんじ批判ですよね。それはいかん。岡村がおかしい。けども、「死ね!!!」ってギャグの、なんつーか、もうちょっと違う使い方はあるかなー、と。その指摘は受け止めて、考えていきたいと思う。岡村の冥福を祈ります。
松本一志(たむらさんの構成作家