beautiful helpless human life

そうして必要に迫られたので、王は涅槃の王のごとくふるまう。
なぜって、王の涅槃は未だ混沌として、ぐずぐずのもの、色のあせたもの、ガラクタ同然のもの、其のようなものが散らばって溶け合っているのを、ただちに律されねばならないし。
気分が悪いわけではない。わけのわからぬ、ただ偽物であるばかりのそれらが、事象の韻律。関連の捻挫。さらには不連続の不徹底。とばかりに、ただ有り有り居り居り。アーリーアーリーオンリーオンリー。♪アーリアリーオリオーラ・ラ・ラ・ラ、ラテンの血に踊るリズム。その只中でなすがまま、変化する未来の分からぬまま、思いのまま我がままにならずとも、ただすべて所与なるを知っている。
すなわち王。この行ったきり、帰り道のない国の王。
涅槃の夢に君臨するので、王は半日寝てすごす。


しかし、涅槃の王ではあるのだが、だからっつってどうってこたーなく、王の座と引き換えの責任が、もうやっとれんくらいしんどい。
王は知ってるだけだからね。知ってても、なんともならんかんね。


王は知っているがゆえに、王として、このごわごわの枕を、柔らかっ。けど頭にフィットしてめっちゃええ具合やーん。という風にしてしまうことはできない。
王知っているのみで、枕の因果、法則、運命、なんかしっくりこんな。ま、存在でいいか。存在というのをどうたらできるわけではない。王だって、手の届くことしかやれんよ。
だって、王がなんかしちゃったら、変わってしまうので、変わってしまうと、それは王の知っているあれやこれやとはもう、変わってしまっとるわけだから、変わってしまって、王の知るのじゃなくなって、そしたら王卒業なわけだから。ひっそりと、しめやかに、一人ぼっちで、校歌もなく。


なので、王は枕の位置をずらしてよく寝れんのを我慢するしかなく、ムカムカして寝付けなくては涅槃に行けぬではないか。何だ。やっぱり王ではおれんのか。革命か。闘争による革命か。革命の引き起こす闘争か。待って闘争はやめて痛いのやだ。しかるに、闘争なきかくめ。


パウーン。


遠くで鳴ったクラクションに、びっくりして体を起こす。
えっとぉ。
空には真昼に白い月。王はなんだか少し泣く。
寒い。
あと、寒いので、窓をしめる。