Don't trust, you finish collecting and finish clasifing.

CDプレイヤー on the「Bitter Sweet Sunshine」。


安っぽいコンポは低音ばかり強調して、音はやけに響く。

Common twist and twist!and twist and twist! 僕は君のこと大好き。

こんなに嘘くさいラブソングは、そんなにない。悲しくないけどね。楽しくもないけどね。


壁。白い壁 in the Hospital?


壁が白くて、気が狂いそうになる、なんて無意識。潜在イメージ。
それはどうだろう。真っ白に囲まれてると汚したくなるからか?
なら、ヤニと爪痕でまみれたうちの壁は、別に狂うようなもんじゃない。
結構気に入ってるんだ。ほんとは違うけどね。


Love てゆーか amour under the 「北回帰線」。


ヘンリー・ミラーは朝5時に1人目を覚ます。
ベッドには170cmのかわいい女が、だらしなく眠っている。
だらりと開いた彼女の、はなびらみたいな唇にキスをする。
荒れた胃の臭い。口臭。ああ、愛してるなって思う。嘘じゃないよ。


泣きながら僕をみない、園ちゃんの話を聞いて、うろ覚えのそんな一節を思い出す。
園ちゃんとこんな風に愛し合えたらよかったのに。
いや。そもそも、そーいうのは愛じゃないのかもしれない。
ヘンリーは、すっかり老いてから、何一つものにならなかった人生を愛と名づけて、ようやく小説を書いたり、もっともっと愛することができるようになったりしたけど、確かなのは、ヘンリーはそうしたってことだけだ。
僕にはそれが何かなんて決められない。
決められないけど。


がりっ、がりっ。


気がつくと、園ちゃんはもう泣いてなくて、壁に向かって爪を立てている。
「旅夫はそうやっていつもあたしの話聞いてない。そうゆうのがダメなんよ。だから、もうダメなんよ。だからあたしは自信なくなるし、なんか旅夫がゆうてくれると、嬉しいよ?嬉しいけど、嬉しくなったことが辛くて、そしたら旅夫、何も言ってくれんで、なんでなん?なんであたし1人でこんな気持ちなん?ねえ?」


ピンク色のマニキュアに、星がキラキラ散った園ちゃんの爪は、指は、ちぎれてひび割れて、爪の下の皮膚の血の色で指ごとに違う模様になる。
僕は痛みに満ちていて、だから美しい指に除光剤を塗る。傷に染みているのか、また泣き始めると、昔見た映画のあらすじを聞かせてあげる。マニキュアをはがし終わると、消毒して、包帯を巻く。そして、過酷な仕事、過酷な僕との生活に疲れ果てた園ちゃんは、眠ってしまう。
いつも。
いつも。


でも、園ちゃんはコックだから仕事場で包帯をはずしてしまう。仕事前には、薄くマニキュアを塗る。そして、仕事から帰るとまた星を散りばめて、そして、火傷や包丁傷だらけの指を破壊しようとし始めたのは、僕のせいだろうか?それとも違うだろうか?
原因を決めることなんてできない。
決めたところで信じることはできない。


園ちゃんが、話し、泣き、壁に爪を立てることで、僕に愛の、ようなもの、もしくは悲鳴の、ようなものを伝えようとする。
けれど、園ちゃんのその悲鳴はまったく正しくて、僕も1人だ。
考えているんだ。それでも、園ちゃんに伝えることを。伝えて、2人とも1人で、それでも何とかやっていける言葉を。


けれど、園ちゃんの指は待ちきれるほど強くなくて、壊れてしまって、気配と声と「Bitter Sweet Sunshine」が響いて残っている部屋で、僕は、いまだに伝える言葉を考え続けている。


そんなのは嘘だ。
伝えて届く言葉、言葉だけじゃなくて何かなんて信じちゃいない。