欲望のありか

散策ついでに、近所の監獄に足の伸ばした。
明るく暗い6月。太陽は輝いていると言うのに、ぐずぐずととどまる雲がそれを遮っている。湿り気を帯びた大気がつきまとって、光は見えているのに届かない。まるで私の生活のようだ。
刺激が足りない。こんな日は監獄で買った女で、楽しむに限る。暗い楽しみに。
監獄では美しい女達が、一望の元に見渡せるように並んでいる。買われるのを待っているのだ。ある嗜好を持った、例えば私のような人間に。





http://skygarden.shogakukan.co.jp/skygarden/owa/solrenew_magcode?sha=1&neoc=2776406106&keitai=0
2人で1つの少女。吊りあがった眉の少女とゆるく垂れた眉の少女。破壊する女の子と破壊される女の子。
そそられるものはあるが、2人の間に私は必要ないだろう。


sweet (スウィート) 2006年 07月号 [雑誌]
監獄の牢名主のように振る舞う、女王然とした女。私の好みではない。


http://spa.fusosha.co.jp/spa0002/2006613.php
空間が歪んでいる。恐るべき速度で微細に振動しているのかもしれない。すぐに達してしまいそうだ。


日経 WOMAN (ウーマン) 2006年 07月号 [雑誌]
そして私は撃たれるように彼女に出会う。造られたように綺麗な骨格。彼女の牢獄に寄り、囁いた。


「こんにちは」
「こんにちは」
「その……なんて言えばいいんだろうね」
「お好きな言葉で。私のプログラムは適切に解釈し、反応します」
「プログラム?」
「はい」
「君は、サイボーグなのかい?」
「そのほうが興奮していただけるなら、そう思っていただいてかまいません」
「……君の骨格はとても美しいね。と言いたかったんだ」
「ありがとう。褒められると感じやすくなります」
「適切な言葉だ」
「気に入っていただけたなら、お買い上げください。SEXの話をしましょう。SEXの話をしましょう」


彼女の後ろに、彼女と同じ顔をした姉妹が並んでいる。たくさんの、欲望のための彼女達。私は、私の欲望がわからなくなる。眩暈をこらえて、それでも何故か笑みをうかべて、薄い雨の中、監獄を出て家に帰る。