上遠野浩平のスピード

帰りにブックオフによって、ブギーポップを何冊か買った。
「夜明け」と「エンブリオ」上下。
実家にはあるけど、手元になかったんで。


ファウストと「ロスト・メビウス」を読んで気になってたことが、すっきりしました。
対決とか世界を変えるほどの脅威とか、映画のキャッチフレーズ的なお題目が、最近のブギーポップから薄れている感じがしてたんだけども、ネタが尽きたんじゃなくて、どうもわざとそういう小説を書いてるんじゃないだろうか。


一つの事件に分かりやすい大きさ(のようなもの)などなくて、でもそれは事件の渦中にいる人間にとっては世界が崩壊するような大きなことで、そしてその後ろではまた違った出来事が動いている、というようなのを書きたいのかなぁ、と。


エンブリオ」でも、最強と稲妻の対決はわりにあっさりしていて、そこを楽しみに読んでいた当時の俺は不満だった。
でも、改めて読み返すと、最強と稲妻(もっと言えば稲妻1人)の決着をつけるところは、そこだった。けども、穂波姉弟やパールやエンブリオにとっては、きっかけではあったけど終点ではないし、稲妻も対決の直前で、そこでは終われずに生き残らなくてはいけなくなった。


んでファウストの短編では、能力やら背負っている事情はでっかいのだろうし、それで実際に戦いも起こるけれど、その部分は上遠野の趣味または読者サービスで、物語の主たるとこはやっぱり恋愛なんですよ。


上遠野知らない人にはまったく意味のない話ですし、上遠野好きには分かりきったことを大げさに言ってるみたいですが、もうすぐ終わるから、まあ待ってくれ。


で、今大きな事件や謎をババーンと突きつける作風は、「〜事件」シリーズにシフトして、「ブギーポップ」では世界の裏側の事件を小出しにしつつ、なんというかよりミニマルな方向に行くのではないか、と思うのです。


下手したら今後、MPLSは出てくるけど、統和機構がまったく出てこない話もありうるかもしれない。霧間凪、ff、リセット、飛鳥井仁が出てこない、とか。
ペパーミントが一番好きだったりするな俺には、大歓迎ですよ。


つまり!
ピート・ビートやロスト・メビウスで、すごい勢いでクライマックスに向かってる、と思ってしまった君!
ブギーポップはまだ終わらないぞ!
ほら、ペイパーカットやしずるさんで忙しくなって、長い(と予想される)クライマックスを書いてる暇がないかもしれないし。


(それって、そうだったらいいなぁってお前の願望じゃないの?)
(まあいいじゃ……いや、でも上遠野サーガはもう謎が多すぎてついていけない気もするんだよな…)
(俺も)
(いや、実は俺も)
(俺も俺も)
(俺だって!)
(どこから沸いてきたんだ。この無数の俺どもは)